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原田あきら
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「保坂展人」考

 わりと多くの人から「なぜ共産党は候補者をおろさなかったのか」といわれます。
 小選挙区で社民党の候補者を民主や生活者ネットワーク、国民新党が推薦した今回の東京8区選挙区。そこに日本共産党の獲得した2万5千票ほどが加わっていたら、この選挙区で石原のぶてる氏を落とせたかもしれないのに…という話です。
 ホントによく聞かされる話なので、私個人の考えとなりますが「保坂展人」考として記しておきたいと思います。
長文覚悟!

世田谷から突然杉並へ

 まず、保坂衆議院議員ですが国会での活躍は多方面に及び、私の周囲では評判のいい議員さんです。所属は社民党。
 前回、保坂さんは世田谷で活動していましたが小選挙区当選ならず、比例選挙でも社民で議席を得ることはできませんでした。しかし、前回の小泉郵政解散選挙で予想以上の比例票が出て自民党がそれだけの候補者を立てていなかったため、なんと規定により社民党に一議席が落ちてきて当選したのが保坂さんだったのです。
 今回、世田谷で民主党が小選挙区立候補する際、保坂さんは現職であり、それなりの人気もある議員さんなので自民党と闘う上で邪魔な存在でした。そこで民主党が独自の候補者を立てない杉並で、保坂さんを推薦するから世田谷では立候補しないでくれというバーターが行われたのです。
 そして突如として保坂さんが杉並で立候補することになったのでした。しかし当時杉並では、すでに日本共産党の沢田俊史が立候補し、一年以上活動を展開していました。もし共闘を考えていたのなら、この時点で社民党は日本共産党に話をつけにいきますよね、普通。

野党共闘の申し入れはなく

 しかし、我が党に保坂陣営からの交渉はありませんでした。
 当時、社民党にとっては小選挙区の勝利というよりも保坂氏の選挙活動を通じて比例票の獲得が狙いとも言われていましたから、それだと日本共産党との共闘交渉などありえませんね。もちろん日本共産党も比例票を掘り起こすことは沢田候補の選挙活動の一つとして求められていましたから、石原のぶてる氏を相手に“小選挙区勝利を至上命題として比例を捨てて共闘”などという行為はよほどの血迷った決断となります。それをおしても一緒に共闘しないか!という熱意はおろか、話し合いさえなかったのが保坂氏立候補の経緯なのです。

保坂氏は何党の候補者か

 さて、日本共産党が候補者をおろすこと意外に保坂氏の当選に有効だったのではないかといわれたのが、保坂氏が社民党ではなく民主党候補として選挙に出ればよかったのではないかということです。実際、保坂氏の選挙を戦った陣営からは「もうちょっと早くから大々的に民主党推薦という押し出しをすべきだった」と声が漏れています。
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 最後はもう民主党の文字しか見えないくらいの候補者ポスターになっていましたから、民主党の公認だったら受かったねと皮肉ともつかない話が出てくるわけです。
 しかし、それはないわけです。社民党の比例をとるという使命も負った保坂氏が最初から民主党では困りますものね。だいたいさすがに憲法9条を変えて多国籍軍に参加できる自衛軍を持つといっている民主党の候補に保坂氏がなろうはずがありません。そういう政治勢力と真っ向から対決してきた候補者ですから。支持者にもそれなら応援できないという人が少なからずいたはずです。
 日本共産党の場合はいくら推薦とはいえ、そんな民主党と共闘する社民党候補者を推薦するのはとても大変なこととなります。この地域で独自に、平和と国民の暮らしを守る政治協約がとれれば話は別ですが…何度も言いますが話し合いは一切なかったのです。社民党と日本共産党の独自候補というのであればこれは話にならないことはないと思います。ただそれだと選挙には勝てませんね…まだ。

政治理念としてどうか

 さて、あらためて理念の問題ですが、9条改悪など平和憲法を脅かし、大企業やアメリカべったりの民主党の力を頼ろうという姿勢は、その政治家が“まず受かる”ための一つの手段かもしれませんが、日本共産党だけはそういう政治姿勢をとってはいけないと思います。国民の目を欺くことになりかねません。
 だから民主党を含めた野党共闘は、その地域、候補者の独自の政策協定締結などよほどの筋を通さなければ日本共産党が一緒にやることはない。社民党と日本共産党なら共闘できる可能性は高いが選挙には勝てない…。
 つまりは、“あそこの政党の動きが悪かった”だとか“ポスターや押し出しが悪かった”というよりも…まだ…根本的に民主勢力の力量が足りなかったというのが現状だったのではないでしょうか。
 いい言葉をいってくれた人がいました。保坂さんの支持者の人でしたが“保坂は保坂でがんばる。日本共産党も日本共産党でがんばれ。”といってくれたのですが、私もそれでいいのだと思います。
 次回いよいよ、国民を欺くことなく、しっかりとした野党共闘でいける見込みがついてきたとき…そのときこそ、本当に明日の政治を変えることができると思います。

苦言と展望

 さて最後になりますが、私に「なんで共産党は候補をおろさなかったのか」といってきたみなさんに苦言を一つ。
 指摘しなければならないのは、国民の輪を自分達でこそもっと広げてくださいということです。日本共産党員は少なくとも全国で40万人の輪を作っています。それぞれが意見も違うし性格も違う他人が、民主主義の確立と反戦平和の一致点で集い、大企業やアメリカの権力や警察の不当な介入なども跳ね返して一定の勢力を保っています。そこにはいろんな葛藤やいざこざもあります。でもそういうのを乗り越えてここまでの組織を作り上げたのです。自分達のそういう努力無しに、民主党の虎の衣を借りただけなのにもかかわらず、真面目に活動を続けてきた政党にたいして「候補者をおろせばよかった」というのは政治論議というより愚痴でしかありません。政治を前に動かす何の力にもなりません。厳しい言い方なのかもしれませんが、小手先で変えられる世の中だと思っていたら大きな間違いだということを気付いていただきたく指摘しました。
 最後にさっきの社民党の方が言っていた言葉を少し変えてあらためて贈ります。
“私は私でがんばる。あなたはあなたでがんばろう”
そして近い将来、しっかりとした共闘を成し遂げましょう。
(09.9.8)
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