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フランス大規模テロに思う
フランスで同時多発テロがおきました。なにか「テロも戦争も許さない」と一口に言いたくない状況ですね。
同じ人間のやることかと疑うほどの惨劇です。あれほどに痛ましく命を奪われた、何の罪もない人々のそれまでの人生を思うと、残された家族の気持ちを思うと自分も三歳の娘のことなんかを思いめぐらしてしまって、テロの首謀者達への怒りを禁じ得ません…。
しかし一方で、フランス軍がすぐさまシリアのISに対して「これまでで最大規模の空爆」を行った…というニュースを聞いた時の、それはまた暴力の連鎖を生み出すのではないのかという危惧の念…これを抱いた人は少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。
国際社会でも「もう一つの戦争」を止めようとの声
それは国際社会でも同じような危惧の念が広がっています。G20では緊急的にこの問題が議題にあげられましたが、そこでもテロとの闘いで国際社会が団結するという一方で、空爆に加わるのは一部の国に留まり、基本的には国境管理と航空の安全強化、資金経路の遮断など非軍事的対処がほとんどです。シリア空爆には世界の反戦団体から批判の声が上がっており、G20開催国トルコの新聞も「(フランスへの連帯を)もう一つの戦争へ向かう理由にすべきでない」と指摘しています。
もう一つの戦争が始まるかもしれないというリアルな危機感の中で、そうした暴力の連鎖を止めなければならないとする議論が展開されています。
テロの被害者と、平和維持の名で行われる空爆の犠牲者
私たち日本人は比較的、各国で頻発しているテロによる犠牲者の報道を目にするのではないでしょうか。命を落とした人々のこれまでの生き方や功績、残された家族の手記や、何年経っても放心状態の遺族の様子…私もそう言う報道を目にして、自分の娘がもしもそんなテロに巻き込まれたら…と、テロリストを許せない気持ちが芽生えてきます。
一方、中東の国々に行けば、逆に欧米の空爆で命を落とした国民の姿が報道されます。イラク戦争時の結婚式への空爆、最近でも国境なき医師団が運営する病院への空爆などで多数の死者が出ています。これもまた痛ましい惨劇なわけですが、「平和維持」「治安維持」の名の下にこうした空爆が行われる恐怖の環境にあって、人間の仕業と思えないようなテロリズムが育っていくのではないでしょうか。
テロが遠い国の話ではなくなってきた日本
パリの惨劇が、どこか遠い国の話ではなくなってきた日本社会です。こうしたテロの惨劇に苦しみながらも中東などで空爆を続ける欧米諸国。それと肩を並べるかのように、自衛隊がいよいよ来年五月、安保法制の成立をうけて南スーダンPKOでの「駆けつけ警護」を始めます。駆けつけ警護というと柔らかく聞こえるもんですが、実際は、戦闘状態に陥った地域へ自衛隊が重装備してあとから駆けつけ、警護する。まあ、戦場で警護も何もあったものではありませんから、事実上の参戦行為ですよね。南スーダンはスーダンから敵国扱いをされており、国内には民族の対立があります。背景には油田の存在があります。自衛隊は誰に銃を向けるのでしょうか。
日本社会の国際貢献とは何か
いよいよ自衛隊が誰かの味方をして、誰かに向けて銃を発砲することが現実味を帯びてきてしまいました。もちろんどっちかの国、あるいはどっちかの民族に日本は敵として認識されることになるわけで、これは恐ろしいことです。
中東諸国において日本のできることは欧米と比べて少なくないと言われます。むしろ、平和維持、治安維持の名の下に中東地域で空爆を繰り広げてしまった欧米にはできない仕事があるのではないでしょうか。こうした危険地域の最前線で働くことができるNGOが日本人であったりします。医療活動や農業技術を伝えることで砂漠の大地を緑の平原によみがえらせたり、こうした活動は世界から称賛を浴びています。中東諸国やアジアアフリカからも求められています。平和の国として知られた日本人にしかできない仕事こそ、いま最も国際社会から求められている日本の国際貢献だと考えます。
(2015.11.17)
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