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06.3.17 教育長人事案件の本会議質問

区長の“教育委員会不要論”について

 さて、この第一回定例議会では教育のあり方そのものが鋭く問われることとなりました。
 さまざまな教育にまつわる問題点が指摘されましたが、その中心的な問題にすわるのが区長の教育委員会不要論だったのではないでしょうか。
 区長は本議会、他の議員の一般質問に対し『小中学校が区立で行なっているということから見ても、選挙で選ばれた…首長が…教育行政についての責任を負うというのが…論理的にも正しい』と答弁しています。
 教育に携わる人間が聞けば誰もが耳を疑う発言です。教育とはその時代の経済情勢や選挙で変わる政治家ごとにコロコロと変わってはならないものです。たとえ区長が選挙で教育改革を主張していたとしても、先の戦争の侵略性を否定したり、軽んじたりする教育観は、教育基本法に基き、教育委員会が厳しく戒めねばなりません。
 教育基本法第10条は、戦中、日本の教育が人身掌握の手段として戦争の道具とされたことに痛苦の反省をし、「教育は不当な支配に屈することなく」と徹底的な教育の独立を訴えました。
 区長の発言は戦中の支配層の弁さながらに、“教育は首長が責任を負うべし”と、真っ向から教育の政治からの独立を否定するものであり、断じて許すことのできないものです。
 あらたな教育長の人事にあたり、この問題は改めて聞いておかなければなりません。区長のこの間の発言は、明らかに教育基本法との矛盾を深めているように感じますが、改めて区長の教育委員会不要論の真意をお聞かせ下さい。  
 

辞任の真相究明は杉並の教育行政の総括に不可欠

 さて、杉並の教育はいま、まさに激動のなかにあり、教育とはどうあるべきかということが真剣に問われているときであります。
納冨教育長はこの間、区長とともに教育立区という大号令のもと、小中一貫、学力テスト、校庭の芝生化など新施策の連発、あるいは教職員から教育委員会への各種報告書の増加など現場に過大な任務を課してきました。学校希望制から学校統廃合はいよいよ地域との軋轢を生んでいることが明らかになり、さらには師範館の設立などへの疑問点の噴出、これまで打ち上げられてきた施策がこの後どのように推移していくのかが大きく問われています。
 そこにきての教育長の辞任です。連発される教育施策の企画の中心的人物である教育長が辞任するにあたり、その真相を明らかにすることはこれまでの教育行政を総括するためにも、今後の方針を組み立てるためにも不可欠です。
 一職員が辞任するのではありません。区教育行政に大きな影響があることは言うまでもありませんが、それが子どものいる現場にも影響を与えるとすればその責任は重大です。任期途中の教育長の辞任はおそらく初めてのことですし、それを問うまでもなく、あらためて異常事態であると指摘します。
 この間、複数の質問に教育長は辞任の理由を述べてはいますが、もちろん疲れただとか、井戸が枯れたなどというだけではこの異常事態を説明することはできません。
 いったいこの辞任の背景に何があったのかを、これからの杉並の教育行政発展のために真剣に問うものであります。
 さて、納冨教育長は今議会中、辞任について問われた際、複数の答弁で“任期を一年三ヶ月残してしまう責任と、新たな人材を投入する責任とを天びんにかけた”と話し、今回の辞任劇について肯定的な側面もあることを主張しました。
一方、“井戸も汲み続ければ枯れる”という表現も用い、教育長の能力を急激に奪うような事象があったことも明らかにしています。
 私たち議員が問わなければならないのはそこから先です。いったいどんな新しい力が何のために必要となっているのか、あるいはいったい任期を一年以上残した教育長の力を想定外に奪ったものはなんだったのか。
 日頃、教育行政に責任を持つのは自治体の首長だと豪語する山田区長。教育長の辞任という重大問題にもかかわらず、それについては何があったのか全くわかりませんでは、こんな情けない話はないといわざるを得ない。
 杉並の教育行政上、重大な分岐点となった教科書採択の時期から、この辞任に至る経緯を区長なりにつまびらかに説明すべきではありませんか、お答え下さい。  
 

教育長に選任された人の人物像とは

 さて、本人事議案で選任された井出隆安氏は直近の役職が東京都教育庁指導部長です。それ以前も同庁人事企画担当部長として、この間の都の教育行政の中心にいた人物です。
 井出氏の人事にあたり、私たち議員が参考とできるのはまずこれまでの井出氏の実績でしょう。
 その点で注目される井出氏の実績のなかに主幹制度の創設があります。校長、教頭以外に、一般教員を「指導・監督」する都独自の役職をつくるもので、多くの教育関係者や専門家などからも批判の声が上がった施策です。
 本来、教職員間のまとめ役として「主任」という役職がありましたが、主幹制度はこれを廃止し、あらたに教職員を指導・監督する権限を「主幹」に与え、さらに給料に差をつけるものです。
 学校運営の方針は、子どもと保護者の願いを受けとめ、教職員の真摯な論議で作り上げるものであり、上意下達の学校、命令による教育では、学校が学校でなくなります。
 学校教育の独立性を著しく破壊し続けている問題として、なかでもやはり追及すべきは日の丸・君が代の押し付けです。悪名高き10・23通知はまさに井出氏が人事企画担当参事の役職時に出された通知で、その中心にいた人物であることは間違いありません。
 この通知はその後、数多くの信念ある教職員に不当な弾圧を加える許可証の役割を果たしました。
 もしもこうした実績が選任の決め手となっていれば、区民の批判の声が湧き起こるのは必至。私たちはきっぱりと反対の意思を示すものです。
 お聞きします。区長はこのような経歴を持つ井出氏の何をもって杉並の教育長としての資質をかったのか、お答え下さい。
 
 

率直な質問

 最後に教育委員会不要論に戻りますが、区長はこの人事案件に対してどのような考えでのぞんでいるのか、おききしたい。率直な疑問ですが、あなたの教育委員会不要論からすればせっかく新しい人物が来たとしてもまたもや任期途中の辞任という問題が起こるのではないか。この疑問に率直に答えていただくことをお願いして質問を終わります。
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