<<
戻る
15.3.12 予算特別委員会意見開陳
<区民生活の実態を直視しようとしない区の姿勢>
私は日本共産党杉並区議団を代表して、2015年度予算特別委員会意見開陳を行わせていただきます。この議会に先立ちまして、党区議団は区民アンケートに取り組み、実に2千通を超える返信をいただき、区民のおかれた生活実態を目の当たりにすることができました。私たちはこの予算特別委員会にあたってこうした区民の生の声を背景に、また安倍自公政権の暴走政治にたいして自治体がしっかりと区民生活の防波堤となって運営されているかを観点に、質疑を展開してまいりました。
我が党区議団のアンケート結果には切実な声が詰まっています。60代女性:「年金が減額になりました。年齢を重ねると病気も多くなり、医療費がかさみ、生活が苦しい。消費税8%になり、食料品をもってレジに行くのが恐怖です。」 60代女性:「生活を切り詰めていくしかない。生きる楽しみを削るしかない。」 70代女性「一生懸命働いて税金も払ってきました。なのになぜこの年になって生活が苦しくて毎日がつらいです。」 30代女性:「景気が良くなったというのは誰のことを見ていっているのか。働けば働くほどお金が無くなり、体調を崩す。年金も生きていけない程度しかもらえない。将来なんかあるわけがない。死ねと言ってるのと同じです。」 70代男性:「小学生や若い女性の殺害事件など最近の痛ましい事件は貧困の拡大による我が国の病理ではないか。」
これらの意見はすべて、ここ数年の暮らし向きを聞いた設問で「生活が苦しくなった」と答えた人達の声です。アンケートでは、生活がよくなったという人もいました。しかし、その数は2073件中82件とたったの4%。悪くなったが1265件で61%です。変わらないという人も31%とそれなりにいますが4年前にアンケートしたときも多くの区民が「生活が苦しくなった」と答えており、それを考えますと変わらないと答えた人の中には悪い状態のまま下げ止まっているという方がたくさんいると考えられます。今回苦しくなったと答えた人たちのなかには4年前よりさらに苦しくなったという方もいるわけで、それゆえに4年前のアンケートよりも記述欄に思いのたけを書き記す人たちが増えたのではないでしょうか。
こうした区民の切実な実態はどうして引き起こされているのでしょうか。それは国の政治が起因していることは言うまでもないと思います。この間、区民は大変な負担増に苦しんできましたが、その実態を当委員会でも詳しく指摘しました。年金収入月20万円の後期高齢者夫婦だと、年間の医療・介護の保険料、住民税、所得税の4負担の合計が30万100円と、とうとう30万円を超えました。そこに15万円の消費税が課される試算となっており、実に年金収入のふた月分以上の税と保険料を払わされている実態がわかりました。現役世代も深刻です。年収400万円子ども一人の家庭ですと医療・介護・年金保険料、住民税、所得税の総額が94万円、消費税が19万円で合計113万円。年収500万円ですと136万円となり、まさに重税国家です。にもかかわらず国は医療も介護も保育も教育も年金もすべてお金が足りないという話をするのですからとんでもありません。こうした増税負担増に加えて、アベノミクスの物価高がのしかかっています。この委員会では自民党から銭湯のガス代が高騰し、経営を圧迫していることを生々しく指摘する質疑がありました。まさにアベノミクスが暮らしも営業も脅かしているということが自民党の質疑からも明らかになっているのです。
当委員会における党区議団の質疑で、田中区長はこうした区民の負担増の実態をどう見ているのか問うと、それは一面的なデータであると切って捨て、貯蓄や財産がある場合も考えられるといった驚くべき答弁を繰り返し、取り合いませんでした。身ぐるみはがされる状態になるまで区は区民の暮らしなど知ったことではないかのような、あまりにも冷たい姿勢と言わざるを得ません。予算編成方針を見まわしても日本の景気動向や世界経済の不透明さは語るものの、肝心の区民生活がどうなっているのかという記述が本当に出てきません。基礎自治体なのですからもっと区民の顔が見えるような記載があってしかるべきであり、こういうところに区長の姿勢というのは表れるものだと感じました。
この委員会でわが党区議団は、庶民への増税負担増政策がいよいよ中高所得者層の没落までをも生みだしている実態を指摘しました。たしかに特別区民税全体の税額は増えてきていますが、これは株取引による増収分の影響が大です。そうした税収を抜けば特別区民税全体としては前年度比マイナスになっているのです。所得階層別の所得割納税義務者数と税額をみると、年収1000万円前後の高所得者層は納税義務者数、税額ともに減っています。区は微減であり、特徴的な結果ではないと答弁しましたが、5年スパンで見ればこの階層の納税義務者は1400名ほど減り、税額は15億円以上減っています。政府がこれほど大企業支援をしてきた政策において、その直接の恩恵を受けるはずであったろう区内の高所得者層が、影響があるどころか、マイナスになってきているというのは深刻です。また、こうした高額所得者層が中所得者層へ下降している傾向にあることもこの資料から読み取れることを確認しました。これまでの国民いじめの政治が深刻な消費不況を招いており、中高所得者層の瓦解が起き始めている危険性を指摘するものです。こうした事態は自治体でなければ国につきつけられないのではないでしょうか。
この間、区長は国の悪政に対して現状を見守るばかりで、区民生活の実態を直視せず、国政の在り方に異を唱えないという姿勢をとり続けています。これは重大な問題であり認められません。区民生活の厳しさを国に有効に伝えようと思えば、区長の影響力は小さくありません。無謀な増税負担増をやめよ!アベノミクスを中止し、国民生活の支援に力を入れろ!と勇気を持って訴えるべきです。
<区民無視の財政運営>
この間、自公政権は先行き不透明な経済情勢だからといってさらに国民に緊縮財政を押し付け、さらに消費不況が加速するという悪循環を続けてきました。こうした消費不況の悪循環をとめるためには、増税負担増政治をやめるとともに、区民生活の冷え切った懐を温めるような政治が必要です。党区議団としては認可保育園や特別養護老人ホームの増設を求める質疑をはじめ、国保料・介護保険料の値下げ、児童館やゆうゆう館など廃止されようとしている区立施設の維持発展、施設使用料の値上げやシステム変更の中止、公契約条例の制定、学校の地域ごとの存続、水害対策、精神疾患を生み出すような職員体制の改善、耐震改修の助成強化、高齢者や若者の住まい・家賃助成、障がい者のバリアフリー、さらには戦後70年を迎えた平和都市宣言のまち、原水爆禁止署名発祥の地杉並としての反核平和事業への取り組みなどなど挙げればきりがないわけですが、区民から切実に求められている施策を当委員会で求めてきました。
ただし、当委員会が特徴的だったのは我が党区議団以外にもたくさんの会派が区民生活への支援を呼びかけていたことであります。とくに自民党からはたくさんの要望が届けられていました。臨時給付金への区独自の上乗せ、認可保育園や特養ホームの拡充、不妊治療助成の強化、耐震化率・不燃化向上、銭湯のガス代助成強化、家賃助成などなど数えきれないほどでした。区立施設再編整備計画に総論賛成ではあるものの各論で厳しく追及をしていたのは公明党の委員で、永福和泉区民事務所桜上水北分室の廃止に対する地域の区民サービス低下の問題をとりあげていました。他の会派からも子どもの不登校・いじめ対策への人的配置、路上生活者やネットカフェ難民へのアウトリーチ、若者就労支援、子宮頸がんワクチン副作用被害者の救済などなど次々と区民生活を支援するよう求める質疑が展開されていました。
党区議団は国の経済財政諮問会議が「東京富裕論」を展開し、法人税の一部国有化を強行した問題について触れました。その際、東京都発行によるその名も「東京富裕論への反論」で「特別区は膨大な行政需要を抱えています。特別区の財源に余裕はありません」と書いていることを示しました。この委員会の質疑を見るだけでも、まさに東京は行政需要が充満しており、とてもじゃありませんが財政に余裕はないとわかります。
ところが区はこうした行政需要の存在を議会の質疑を通して認識しながらも、550億円もの財政のダムづくりや経常収支比率80%の目標に執着しています。本委員会では量出制入という言葉を紹介しました。平たく言えば、税金とは一定の目的をもってその範囲で徴収するものである、という税の大原則です。本来目的をもって徴収された税金を550億円という規模で貯め込むというのは重大なことです。もちろん自治体が基金を積むことは当然あることで理由が定まっていれば問題のある行為ではありません。そこで区はこれまで550億円の財政のダムづくりの理由として「今後の行政需要や災害対策に活用」といってきました。そのため、当委員会で党区議団は災害対策にいくらの基金が必要なのかを質疑しました。すると副区長は、仮設住宅建設など具体的な災害対策にあてるなどの財政課長の答弁を遮り、「持続可能な財政運営のため」と答弁を修正した上で、「標準財政規模の二分の一を目指す。目指した後でどういう手法で基金というものを考えるか、議論してきた。550億をどう使うかというのは別の話」と答弁しました。この答弁で副区長は「とりあえず」550億円を目指すとか、「当面」550億円を目指すという答弁を繰り返しました。驚くべき重税によって捻出された税金が、これほどまでに軽く、「とりあえず」貯めこまれていくというのはいったいどういうことなのか。先に示したような「生活が苦しくて毎日がつらい」「将来なんかあるわけない」と切実に訴える区民の現状とはかけ離れた議論であり、到底認められません。
党区議団は消費税の使途についても質疑しました。あれだけ社会保障のためといわれ続け、予算書にも「使途は社会保障関連経費」とわざわざ記載されているにもかかわらず、消費税収55億円の使途の内訳は不明朗でした。あたかも社会保障に使ったかのような表を区政経営計画書に掲載し、区民の目をはぐらかそうとするなど、不誠実な区民周知の在り方に驚くとともに、これは厳しく批判したいと思います。55億円の税収が杉並にあるということはすなわち数百億円もの消費税の負担を区民が背負わされているということです。どうしたら55億円の財源を苦しい生活を余儀なくされている区民にあてられるのか。そこに心を砕くような区政が求められています。
そもそも杉並区の財政は、医療介護など含めた総予算が2700億円。たとえば全児童館の運営費は人件費も含めて、総予算の1%に達しません。昨年度の黒字額(実質収支額)は74億円。当委員会で質疑された多くの会派の要求をそのまま呑みこみつつ、財政の健全性を保つことが可能です。この財政力を保持しながら、区民の様々な要求に応えられていないどころか、次に述べる区立施設再編整備計画や使用料の値上げ等を突き進む区政運営は到底区民の納得を得られるものではないということを指摘するものです。
<区立施設再編整備計画:まちづくりでなくまち壊しの区政運営>
さて、杉並の住宅都市としてのまちづくりが大転換されようとしています。これまで杉並区は全域を7つの地域と46の地区に分け、小中学校や児童館、ゆうゆう館、各種会議室に体育館、図書館など区立施設を等間隔で配置してきました。いわゆる近隣住区の考え方に基づくまちづくりの大方針によって、杉並区はたとえ駅前でなくとも、どこに住んでも便利で、人間関係の豊かな街なみが形成されてきました。ところが田中区長はこのまちづくりの在り方を一方的に古いと決めつけ、これからは変化する社会情勢や人口動態に合わせて「駅周辺のまちづくり」に切り替えるとしてしまったのです。この方針変更に伴い、各地に配備された様々な区立施設は大規模な統廃合、廃止・転用の憂き目にあうこととなります。田中区長は7つの駅周辺を整備すれば杉並の新たな魅力になると言います。しかし、たとえ駅前が整備されたとしても、駅周辺でない地域から区立施設が削減されていけば、住宅都市杉並の魅力はむしろ失われます。あらためて計画の白紙撤回を求めるものです。
当委員会でわが党区議団の質疑で「区立施設再編整備による施設削減や使用料の値上げは区立施設を使いづらくさせると思うのですがどう思うか」という質問したところ「区民の利便性を高めるためにやっているものでございます。」と答弁しました。今この問題で困っている区民が聞けば本当に驚く答弁だと思います。私はこの間、様々な区民から聞き取りを行ってきましたが、例えば卓球で一般開放を利用している区民は、「本当に不便になった。週に行く回数は限られているから、わざわざ使いにくいし、狭い杉並の体育館を利用しようとは思わない。ここ何回かは中野に行っている。」と語ります。私の質疑よりも明瞭に区の答弁を質してくれています。パブリックコメントも実施せず、強引に大幅値上げとシステム変更を進めた結果です。
全体として、区長がいう「少子高齢化へのチャレンジ」は事実上、少子高齢化に合わせて施設数を削減し、施設利用料を大幅値上げし、区民サービスを低下させるものです。こうした政治こそ、これまで国民の活力を奪い、少子高齢化を生んできた根本原因であり、認められません。本当に少子高齢化にチャレンジするつもりがあるのなら区立施設を46地区ごとに維持、発展させ、他区にもまして暮らしやすい杉並をつくるべきです。
<区民が主人公の区政へ転換を>
日本共産党杉並区議団は、いまこそ、杉並の大規模かつ豊かな財政力を区民生活の向上、区立施設の維持発展にあて、今極めていびつな状態にある区政運営、財政運営を転換することを提案します。この提案は困難を抱える区民を助けるということにとどまらず、この地域の景気対策となり、ひいては少子高齢化を克服することになる提案です。一方で杉並が今ひた走っているこの道を歩めば、区民の暮らしは荒廃し、景気を地域から冷え込ませ、少子高齢化を呼び込むことになると指摘する警鐘でもあります。
ボトムアップを表明し、職員や区民の声をしっかり聴いて区政運営を進めるといってきた田中区長でしたが、今では完全にトップダウンの政治となり果てています。この間の区民の不満の声はまさにトップダウン政治の弊害が噴出しているものと指摘せざるを得ません。
この一、二年に限って区政を総括すれば、区民の激しい声に押されるようにしてではありますが、認可保育園や特別養護老人ホームの拡充をはじめ、積極的な施策も散見されるようになりました。この道こそ区民とともに歩むべきであり、区立施設再編整備計画や使用料の見直し、区民生活無視の財政運営などについては抜本的に見直すべきと指摘します。あらためて田中区長および理事者の皆様におかれましては、区政の主人公は区長ではなく、区民であることを肝に銘じ、区民の要求こそ区政の教科書として尊重し、区政運営に当たられることを要望します。
それでは各会計予算案、および当委員会に付託されました各議案について賛否を述べます。以上述べた理由により、議案第28号H27年度杉並区一般会計予算、議案第29号国民健康保険事業会計予算、議案第30号介護保険事業会計予算、議案第31号後期高齢者医療事業会計予算については反対、議案第32号中小企業勤労者福祉事業会計予算については賛成します。
以下関連議案については反対議案などについて簡単に理由を述べます。議案第10号杉並区職員の特殊勤務手当に関する条例については職員の生活を苦しめる方向性との見解から反対、議案第12号杉並区行政財産使用料条例の一部を改正する条例は、ゆうゆう館の風呂場を洋室にすることに伴い有料化するものであり反対、議案第15号杉並区高齢者活動支援センター及びゆうゆう館条例の一部を改正する条例は、ゆうゆう阿佐ヶ谷館は現状のまま存続させるべきとの立場から反対、議案第16号杉並区介護保険条例の一部を改正する条例、議案第17号杉並区立子供園条例の一部を改正する条例、議案第18号杉並区保育料等に関する条例については、いづれも負担が増えるケースがあり、昨今の経済状況から考えると負担を増やすべきではないとの立場から反対、議案第19号杉並区事務手数料条の一部を改正する条例については、マンション建て替え等の円滑化に関する法律による容積率の緩和は認められないため反対、議案第35号、議案第36号杉並区国民健康保険条例の一部を改正する条例は、国民健康保険料の値上げ、また国保料の値上げと徴収強化となる国保の広域化を狙ったものであり、反対します。
その他の議案については賛成します。なお、議案第8号杉並区特別職報酬審議会条例の一部を改正する条例、議案第9号杉並区職員の倫理の保持及び公益通報に関する条例等の一部を改正する条例についての2議案について、わが党は、文部科学省や首長の教育への政治介入に道を開く教育委員会の制度改悪には反対の立場ですが、今回の条例改正は、教育長が一般職から特別職になることにともなって、その待遇などを規定する限りの条例改正と判断し賛成します。教育委員会が住民や学校現場の多様な教育要求を施策に反映させ、教育の自主性を大切にする機関となるよう申し添えておきます。
なお、予算特別委員会においてわが党区議団の富田委員によるLGBTおよび事実婚にかんする質疑の中で、委員の間から「外国に行け」とか、富田区議のパートナーを指して「普通の女と結婚しろ」などという、極めて差別的で粗暴な不規則発言がありました。立場の違いはあれども差別的、排外的な発言、暴力性を帯びた口調は看過できません。今後も区民の願いをせおって、活発な議論を求めて、一言申し上げておきます。
最後になりましたが、多くの資料を短期間に準備していただいた職員のみなさんにお礼を申し上げ、日本共産党杉並区議団の意見開陳を終わります。
(2015.3.18)
<<
戻る
原田あきら事務所
杉並区成田東3-5-1
TEL 03-3315-9238
Copyright(c)2004,AKIRA HARADA
本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。